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第九話:フランスでの就職活動から得たもの(1):自分を信頼する気持ち

2月 17th, 2015|Comments are off for this post


みなさん明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。本コラムも、新しく仕事というテーマを綴っていきたいと思います(写真は、お年賀状代わりの古いグリーティングカードです)。

出産後に復学した私は、いよいよフランスでの就職に挑戦することにしました。渡仏するとき「3年以内に納得できる就職先をみつける」と誓ったと第1話に書きましたが、その期限が迫っていました。

次回に詳しく書きたいと思いますが、私の初めての海外就職活動は、とても不器用なものでした。そんな中でも、振り返って役に立ったと思うのは次の3つです。もし、少しでもどなたかの参考になるならば、それ以上のことはありません。

フランスでの就職活動で役に立ったと思うこと

私は、これまでの経験が活かせる法律の専門職としての就職に的を絞り、また、マイノリティ−となってとことん自分を試したいという考えから、日系企業よりもフランス企業への就職を目指していました。

従って、以下は特に、外資系企業や既経験分野での就職を目指す方に当てはまるかもしれません。新卒の方や未経験分野に挑戦される方、日系企業を希望されている方は、参考程度にご覧いただければと思います。
 

【1.アピールポイントを把握する】

日本の事情に詳しくないフランス人のリクルーターに、日本での所属組織名や大学名をアピールしてもあまり意味がないでしょう。私の場合は、次の三点をアピールしてリクルーターの目を捉えたいと考え、履歴書とレターを作り込みました。

キャリアの一貫性:一貫して、法律、特に知的財産法の分野で経験を得るよう努めてきたことを、ストーリーとして説明できるようにしました。「私のキャリアは、アメリカで法律を学び、現地でパラリーガルとして米国人弁護士を助けて働いた経験から始まります。帰国後、日本で法学士号を取得しました。在学中に、国家公務員試験に合格したことは、日本法の幅広い知識を有する証明になりうるのではないでしょうか。その後、日本最大級の公的研究機関で、知的財産の法務に携わりました。そして、この職務経験に関連する修士号を、フランスで2つ取得し、現在に至ります」と言うところです。

即戦力となるスキル:上記の経験から得た具体的なスキルを棚卸しし、即戦力となることを、可能な限り客観的にアピールしました。例えば、比較法的な視点からの調査能力や専門的な文書作成能力を示すため、専門誌に英語で発表した論文があることを明記しましたが、これは面接でもしばしば話題になりました。

語学力と国際的な経験:強みは何といっても日本語ですが、これに加え、英語及びフランス語の語学試験のスコア、大学院生時代にフリーランスで翻訳や通訳を請け負った経験も含め、3ヶ国語で働けると主張。また、3ヶ国で学んだり働いたりした経験から、異文化への適応力、コミュニケーション力、行動力などもアピールしました。
 

【2.ターゲットを絞る】

リクルーターの目に留めてもらうためのアピールポイントを把握したら、アピールが効きそうなのは、どんな業界のどんな企業だろうかと考えました。

そして、気になった企業について、主にインターネットを用いて、具体的な活動分野や商品を詳しく確認したり、産業分野のトレンドや将来性を調べたり、LinkedinやViadeo(Linkedinのフランス版のようなもの)などで実際に働いている方々のプロフィールを確認したりしました。その上で、可能性がありそうだと判断した企業に履歴書とレターを送り、いくつかの面接の機会やオファーをいただくことができました。

フランスでは、求人広告を出していない企業でもチャンスがある場合が多々あるので、どんどん積極的に問い合わせてみるのが良いと思います。その際、次に述べるように、知人から紹介をしてもらうと、人事を介さず未来の上司に直接つながるなど、チャンスがより高まることでしょう。
 

【3.人に会う】

パリ政治学院が行ったアンケート結果によると、約1/4の卒業生が、就職先は個人的な人脈に頼って見つけたと回答しており、日本よりも多い印象です。周りを見ると、キャリアを積めば積むほど、個人的な人の繋がりに基づくスカウトやヘッドハンティングがありふれているようです。

私も、フランスと日本でお世話になった方々を中心に、広く相談させていただきました。その結果、独力では得ることができない興味深い情報を教えていただいたり、個人的にご紹介いただいて、面接の機会やオファーをいただくこともできました。

また、たとえ就職活動には直接結びつかなくても、人にお会いすることで精神的に支えられる気持ちがして、特にこの時期、とてもありがたかったです。

ゼロからの成功は、自分を信じる気持ちに

私が面接の機会やオファーをいただいたのは、全てフランス企業でした。従って、面接は、ネイティブが同席して英語力を試される場面もあったものの、基本的にフランス語でした。

3年前に学び始めたフランス語は、英語に比べてもまだまだ自信がありませんでしたが、質問内容は、きちんと準備をしておけば十分対応が可能でした。一方で、フランスの面接文化(?)に合わせ、いかにも自信たっぷりを装って受け答えをするのは、私にはかなり辛かったです……。

いただいたオファーの中から今の職場を選び、初めの数か月を有給のインターンとして働いた後に正職員となりました。既存のポストに空席があったわけではなく、上司がポストを新設してくださいました。

どのオファーも断りがたく、職務内容、自分の適性、将来の可能性などを比較しながらぎりぎりまで悩みました。最終的には、インターン中に出会ったプロとして尊敬できる同僚たちと一緒に働いていきたかったこと、また、私を認めてくれた上司の期待が嬉しく、それに応えていきたかったことが決め手になりました。

契約にサインをした時、渡仏から約3年が経っていました。それは、当初の自分への誓いを果たした日でした。言葉もろくにできず、夫以外に知る人もいない。これまでの所属組織に頼れず、ありのままの自分をぶつけていくしかない。そんなゼロの状態から、ここまでやったこと。この体験は今、自分を信頼する気持ちとなって生きています。

この様に、フランスでの就職活動は実り多いものとなりましたが、実はその裏では、もう嫌というほど孤独で醜い自分も味わわせられました。次回はこのことも含め、もう少し就職活動について書かせていただきたいと思います。

このコラムに関するご意見、ご感想、テ-マに関するご要望などを、お待ちしています(nadeshiko.voice@gmail.com)。

 


   

remonruwa




モンルワ幸希
一橋大学。在学中に米国カリフォルニア大学留学。卒業後、公的研究機関で知的財産権のマネジメントに携わる。長男出産後に渡仏し、パリで6年間を過ごす。パリ第2大学及びパリ政治学院で修士号(国際私法、知的財産権法)、在学中に次男を出産。パリでの弁理士事務所勤務を経て、2015年にスイスのジュネーヴへ移住、国際連合の専門機関に勤務。
EMAIL:nadeshiko.miyuki@gmail.com

   

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