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安田菜津紀さん

濱田 真里
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「最初は普通に就職しようと思っていた」

濱田:私たちの世代は、「自分の道を見つける」ということを難しく考えすぎているような気がするんです。本当は他にやりたいことがあるけど、とりあえず大手企業への就職を目指す。でも、「大手企業に就職する以外の道は失敗」と考えるのはもったいないと思うんです。旅を通して色んな生き方をする女性、まさに菜津紀さんのような女性に出会う度に、その思いが強くなります。

安田:後先考えなければいいんじゃないかな(笑)。出来ない理由をいっぱい探しちゃうのはすごくもったいないなと思います。それよりどうやったら出来るか、って考えるほうが人生は楽しいと思う。

濱田:そうですよね。菜津紀さんは就職活動をすることなく、フォトジャーナリストの道を選択されたんですか?悩んだりされませんでしたか?

安田:実は大学3年生くらいまで は、私も普通に就職しようと思っていました。写真で伝えることに可能性を感じつつも、自分には渋谷さんのようにやっていくだけの技術や経験が圧倒的に足りないと思っていたから。だから最初は新聞社とかに就職して、修行でもしようと思っていました。それで渋谷さんに「就職活動がそろそろ・・・」という話をしに行ったんですけど、そこで「は?」って言われて(笑)。「今から写真一本でやっていく覚悟がないなら、今すぐ写真自体やめろ」って。

濱田:え、どうしてですか?

安田:渋谷さんは当時、フォトジャーナリストの組織に所属していたんです。だから私、そこのボスに言いつけに言ったんですよ。「お宅の渋谷さんがこんなこと言ってますよー」って(笑)。そしたらその方がすごく論理的に、分かりやすく説明してくださって。「あなたがもし、写真やジャーナリズムそれ自体といった、抽象的なものに興味があるのなら就職することをお勧めする。でも、カンボジアの人身売買やエイズの問題に取り組みたいという具体的なテーマや目標があるのなら、今のまま進んだほうがいい。一度関わったら、目も耳もふさぐことはできない。一段落するという選択肢がない中で、覚悟はできるか?渋谷くんが言いたかったのはそういうことだよ。」と。そこで「そうか、じゃあやってみよう」と自分の中ですとんと納得できたんです。

「“人としてこうなりたい”と思ったのが、たまたまフォトジャーナリストだっただけ」


安田:学生さんから相談を受けることがあるんです。「将来こういうことがやりたいけど、リスクが・・・」といった話をよく聞きます。相談してくださる学生さんはたくさんいますが、二つのタイプにきっぱり分かれます。行動しているタイプと一歩踏み出せないタイプ。もう実際に行動している人に関しては「まずはとことんやってみたらいいよ」と言って、あまり心配はしません。だけど考えるだけ考えて、頭でっかちになってしまっている人はもったいない。カンボジアへのスタディーツアーを企画したのは、そういう人たちのためでもあります。海外やカンボジアに行くのが初めてという人たちに優先的に来てもらっています。「とりあえず、一回行ったら何か分かるべ」ってことで。

濱田:そうですよね。飛び込んじゃえば、あんまり大したことないんだなってわかることもありますよね。

安田:外に出れば色んな人に会うし、ヒントはいっぱい転がっている。それに、行動するとかっこいい大人にいっぱい会えます。「教師になりたい」とか「料理人になりたい」という職業に対する憧れも大切だけど、その職業で実際に活躍している人に出会うというのはやっぱり違う。私も最初から写真で生計を立てていこうと思っていたわけではないんですよ。でも渋谷敦志さんという人に出会って変わった。彼は「人として人とどう向き合うのか」ということをすごく大事に考える人で、「私も人として彼のようになりたい」と思いました。だから「フォトジャーナリスト」というのが最初にあったわけではなくて、「こうなりたい」と思ったのが、たまたまフォトジャーナリストだったというだけなんです。

「フォトジャーナリストとして、女性として」

濱田:就職活動をしているとき、海外の情報を色々調べたんです。でもあるのは男性の活躍ばかりで、一番知りたい女性の働いている姿がほとんど見つからなかったんですよね。それで、海外で活躍する女性の姿が見てみたいと思ってなでしこVoiceを企画しました。

安田:確かに企業で働いて、海外で活躍している人となると男性が多いと思います。でも、自分の力で起業しているのは女の人が多い気がします。フォトジャーナリストの世界はまだまだ男社会ですけど。

濱田:女性でフォトジャーナリストって大変じゃないですか?

安田:女性ということを特別意識したことはないですね。逆にイスラム教徒の家庭で出産の撮影をしたり、男性には絶対に入れないところにも入っていって取材できたりします。

濱田:なるほど。ところで菜津紀さん、もうすぐご結婚されるんですよね?フィアンセの方にはどうやって出会われたんですか?

安田:出会ったのは去年の私の写真展。去年の今頃から一緒に住んでいました。でもその頃からお互い「結婚するのが当たり前」という感じで。

濱田:ということは、去年出会って、いきなり同棲して、いきなり結婚を決められたということですよね?決め手は何ですか?やっぱりコーリング(天命)を感じたんですか?!(笑)

安田:うーん、コーリングですね、コーリング。でも結婚を決意したきっかけは今回の震災で、家族は一緒にいるべきだと思ったからです。私は中学生のときに父と兄を亡くしているんですが、フィアンセも二人の兄弟を亡くしているんです。だから家族の大切さは分かっているつもりだったけど、今回の震災でやっぱり家族は一緒にいて、絆を確かめあって生きていきたいと改めて思ったんです。

濱田:そうだったんですね。個人的には世界で働く女性の結婚や子育てといった、女性としての悩み、現実の部分をすごく知りたいと思うのですが、菜津紀さんはその辺りはどう考えていらっしゃるんですか?

安田:今は同棲しているし、結婚しても状況はあまり変わらないですね。子育てに関してはみんなで育てればいいと思っています。私たちにとって「家族」は血の繋がりだけじゃないんです。いつもマイケルジャクソンの格好をしてくる仲の良いスリランカ人も、事務所の仲間も家族以上の絆があります。だから子どもも二人で育てていくと考えると難しいかもしれないけど、ぽこっと産んで、みんなで育てればいいって思っています(笑)。

濱田:なるほど。みんなで一緒に育てるっていいですね。今ちょっと、パラダイムシフトしました。私も産みたくなってきました(笑)。それこそ、コミュニティで育てるということですよね。

安田:そうですね。子どものためにも、お父さん、お母さんのためにも「家族」をより広く考えるのってすごくいいことだと思います。

濱田:今はそのつながりがなくて一人で育てたり、家族だけで育てたりするから困っちゃうんですよね。これからはグローバルなコミュニティで育てるっていうのもありですね。それやりたいです!

安田:そうですね、やろうやろう!私たちも「マサイ族に預けるか」とか色々話したんですよ(笑)子どもを連れて世界一周とかもいいですよね。

「経験したことを忘れず、種をいっぱい増やしていけば、いつか絶対に花が開きます」


濱田:最後に、私のように海外で働きたい学生や、一歩踏み出せずにいる学生にむけて、メッセージをお願いします。

安田:学生時代ってお金はないかもしれないけど時間はあるので、チャンスがあれば何でもやってみてください。まずは、行動することが一つの種になると考えたらいいと思うんです。行動したことをすぐに将来につなげよう、と焦る必要はありません。私も高校2年生でカンボジアに行ってから、フォトジャーナリストになろうと行動するまで5年かかりました。でもこの5年の間に、カンボジアでの経験が種として消えなかったからこそ、次のステップに進めました。だからまずはたくさん行動すること。そして経験したことを忘れず、種をいっぱい増やしていくこと。そうすれば、いつか絶対に花が開きます。焦らず種を増やしていけば心の選択肢がたくさん増えて、それが人生を豊かにしてくれるはずです。


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1 Comment

  1. アバター
    Wheelie 2012年2月9日

    素敵なインタビューですね! このやり取りをみて凄くやる気が湧いてきました! 
    世界に行くだけでなく何かを実行する。 その何かを私も見つけます! 

    返信

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