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小島幸子さん

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初めての海外就職は、カンボジアのツアーガイド

濱田:海外に興味を持つようになったきっかけを教えて下さい。

小島:20歳くらいの時に中国で仕事をしていた祖父に誘われて、中国を一緒に旅したことがきっかけです。そこで自分が想像したことがないほど貧しい暮らしをする人たちを見て、カルチャーショックを受けました。生まれた場所が違うだけで、こんなにも選択の自由がなく、生きることだけに精一杯な毎日になのかと。それからは、自分の境遇を最大現利用しよう、大学という狭い世界にいるのではなくて広い世界を見に行こうと思いましたね。将来のビジョンもガラリと変わり、それまで大学卒業後は大手企業に入り、結婚出産をして家庭を築くのが当たり前だと思っていたのですが、その生き方に魅力を感じなくなりました。

でも、自分がどんな仕事がしたいのかを考えてみても、何がしたいのかわからない。そんな時にふと、「日本語教師の資格をとれば、仕事をしながら色々な世界が見れるかも!」と思いつき、大学3年生の春から日本語教師の養成学校に通い始めることにしたのです。

濱田:大学卒業後は、その資格を利用して海外で働かれたのでしょうか?
小島:すぐにでも海外で働きたかったので、大学卒業前に青年海外協力隊に応募したのですが、結果は不合格。そこで、日本企業も一度経験してみようと思い、日本の語学学校に就職しました。3年が経った頃、やっぱり海外に出たいという思いが強くなり、青年海外協力隊を再受験。しかしまた落ちてしまい、さすがに協力隊には縁がないのかなと思いましたね。

そんな時に、カンボジアの日本語学校の募集を見つけて応募したんです。応募時にはすでに採用枠が埋まっていたのですが、採用担当の方に熱い思いが伝わったのか「そんなに海外に出たいなら、うちは旅行会社もやっているので、そこで1年働いてみませんか? 来年また教師募集をする時に採用しますよ」とお声がけいただきました。とにかくアジアに行きたかった私はふたつ返事で承諾し、カンボジアでツアーガイドとして働き始めたのです。

自分の力でお金を稼ぎ、生きていく大切さを伝えたい

濱田:現在経営されているアンコールクッキー立ち上げのきっかけを教えて下さい。

小島:ガイド中にお客様から聞いた「カンボジアにはお菓子のお土産がないから、タイの空港でお土産を買う」という言葉がきっかけでした。勤務していた日本語学校の会長からは、「アジアで食品ビジネスはうまくいかない」と言われたのですが、どうしてもやってみたかったんです。当時29歳だった私は、成功するかどうかよりも、自分のアイディアで挑戦してみたいという気持ちの方が強かった。カンボジアのお土産を買いたいお客様と、仕事がないカンボジア人、そしてカンボジアが好きな自分、これらを繋げるビジネスができたらすごく面白いし、一石三鳥だと思っていました。

2003年からお店の準備を始め、会社登記をしたのが2004年。最初は現地で小さいオーブンを買って、3か月間ひたすらクッキーを焼いて試作をしました。カンボジア産の材料を使いたくて市場に行っても、売っている粉が何の粉かわからなくて、粉について調べるところから始めたり、地方で直接原材料を仕入れられるところを探したり。「カンボジアだからこんなものだよね」と思われたくなくて、納得できるまで味を追求しましたね。こだわり抜いたレシピなので、今でも当初のレシピから一切変えることなく使い続けています。

濱田:レシピの他にもこだわりはありますか?

小島:接客業なので、日本人や外国人のお客様に満足いただけるサービスをご提供することにこだわりを持っています。特にカンボジア人スタッフは、自分自身が良いサービスを受けた経験がないので、人がどうしたら喜ぶかわからないんです。そこで「サービスの基本十カ条」を作り、時間は守る・挨拶をきちんとする・約束を守るなど、厳しく指導しています。

このお店は日本人や外国人のお客様が購入してくださることで成り立っているので、カンボジアの習慣は違うかもしれないけれど、ここで働くなら会社のやり方に合わせてくださいと伝えています。もちろんお願いするからには、私自身もきちんとしなければいけないので大変ですが、心のゆるみが製品やサービスに反映されますからね。「カンボジア人だから仕方ない」と終わらせるのではなく、「同じ人間だし、決まりは決まり。みんなで守っていきましょう」という運営方針を徹底しています。

カンボジアで事業をする中で実感したのが、ボランティアを通じて何かをあげるのではなく、カンボジア人たちが自分の力でお金を生みだすための仕組みや知恵を提供することの重要さ。だから私は、会社を創って働く場所を提供することで、カンボジア人に自分の力でお金を稼いで生きていく大切さを伝えられたらと思っています。

自分の人生だから、自分で選択して責任を持つ

濱田:実際は大変なことも多いと思いますが、どのように乗り越えられているのでしょうか

小島:私以外にまとめ役がいないので、自分の心が折れた時にこの店は終わると思っています。その責任感が私を奮い立たせていますね。それでも辛い時には、諦めないで最後までやれば五分五分の確立で可能性が残るけど、諦めたらそこで終わりだと考えるようにしています。実際どこまで頑張れるかは、自分自身にもわかりませんが、戻る道を断ち切りながら、前へ前へと進んでいる感覚です。

でも、思い返してみると、1年前に悩んだ内容って忘れているんです。だから「今はつらく思えることも、来年には乗り越えているはず」と捉えるようにしています。もちろん、考えて解決することだったら悩めばいいけど、解決しないことだって山のようにある。だったら悩まない方が体に良いですよね。この仕事を通じて、日々人間的に成長させてもらっているなと思います。

濱田:なぜ、そこまで頑張れるのでしょうか?

小島:よく聞かれるのですが、「自分がやりたいから」に尽きます。カンボジアで事業をやっている理由は、好きだからです。そこに高尚な理由はありません。カンボジア人のためとかではなく、ここにいたいと思える場所で、自分にできる役割があることは幸せですね。そもそも、自分が心地よくないと何事も続きません。たまに「私はこんなつらい思いをしてまで、なぜこの場所にいるのだろう」という局面もありますが、誰に強制されたわけでもなく、自分が選んでここにいる。自分の人生だから自分で選択して、責任をもって生きていきたいですよね。

濱田:最後に、小島さんご自身が生きる上で大切にしていることを教えてください

小島:同じ出来事でも、その意味をプラスに捉えていける敏感さを大切にしています。自分は何の使命をうけてここにいるのだろうと考えたり、辛いことが起きた時も、「何か意味があって起きている」と解釈してみたり。自分の心の置き所をどこに持つかは大事ですね。きっと、どんな出来事もプラスに捉えていける人が運を開いていけるのではないでしょうか。


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