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小野朋江さん

濱田 真里
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東京生まれ。ASIA Link代表。日本語教師として15カ国800人の留学生・ビジネスマンに日本語を教える。様々な国籍の人がともに働く社会をめざし、2011年10月にASIA Link設立。外国人ママ応援サークル「多文化共生ネットワークたま」主宰。

「4人目を産んだ時はさすがに専業主婦になるしかないと思った」

濱田:ご自身で会社を起業された小野さんですが、どんな思いで起業されたんですか?

小野:留学生の日本での就職活動をサポートしたいという思いですね。日本人の学生のほとんどが有名な企業に入りたいと考えるけど、それは留学生も一緒。だけど大企業への就職はやっぱり狭き門で、大半は中小企業に就職するんです。でも、外国で見たことも聞いたこともない会社に就職するのって、すごく不安ですよね。だから留学生と中小企業がお互いを知るための出会いの場を作ろうと思って、それがASIA Linkを立ち上げたきっかけです。

濱田:どうしてそういう思いを持つようになったんですか?

小野:それは日本語教師として働いてきた経験からですね。日本語学校や専門学校で留学生に接する中で、何らかの形で彼らの将来をサポートすることが出来たら…と思うようになりました。あとは自分が働いていた職場が色んな国の人たちが集まる空間だったので、日本の企業でも同じような環境を作ることが出来たらいいな、と。

濱田:ところで小野さんは、もともと日本語教師をされていたんですね!そちらのきっかけは何だったんでしょうか?

小野:きっかけは夫の駐在でフィンランドに1年間住んだこと。言葉が分からず、本当に苦労したんですよ。それがフィンランド語を習い始めて日常会話が少し出来るようになっただけで、生活が楽しくなったし、覚えたての言葉で会話できることがすごく嬉しかったんです。
外国人に言葉を教えるのは素晴らしい仕事だと思い、出産を機に勉強して、日本語教師になりました。

濱田:出産後に新しい仕事をはじめ、そこからさらに起業とは、ものすごいバイタリティですね!

小野:私にとっては逆に出産が原動力なんです。出産とか子育てって、思い通りに行かないことばかり。諦めなきゃいけないことがたくさんあって落ち込むことも多いけれど、そのテンションを上げるには自分に夢を与えてくれる希望が必要なのね。私にとってはそれが日本語教師になることであり、起業することだったんです。激しく落ち込むときほど、大きなモチベーションが必要で、私も4人目を産んだ時はさすがに専業主婦になるしかないかな…と思ったんですよ。でも、今までみたいに日本語教師として専門学校に勤めるのが難しいなら、自分で仕事を作ればいいんだ!と気が付いて(笑)そうやって、もう一度頑張れる!と思った時のエネルギーって本当にすごくて、まさに心に火が点くんです。

「ニーズに敏感な主婦こそ起業するべき」

濱田:出産が新しいことをはじめるきっかけになる、というお話は初めて聞きました。子供を産んで自分の夢を諦めてしまう女性も多いですよね。

小野:そうですね。男性は夢を叶えるために、数年後に何をして…とストーリーを描いて、その通りにキャリアを積んでいくことが出来るけど、女性にはそれが難しいんですよね。出産や子育てで、どうしても何かを諦めなきゃいけない時があるから。でも、それが逆に方向転換をしたり、何か新しいことをはじめたりする良いきっかけになる、と思えばいいんです。だから女性はいつでもやり直せるし、再出発できるんだ、って。

濱田:確かにそういう意味では、男性と女性の間に根本的な違いがあるのかもしれませんね。

小野:そうだと思います。どんなに頑張っても女性が男性みたいに働くのは体力的に厳しいし、逆に出産なんかは女性にしか出来ないことだし。差別をするというわけではないけれど、お互いに違いを認めてそれを活かした方が良いと思うんです。それぞれ得意分野が違いますから。そういった意味で、女性は男性よりニーズを把握するのが得意だと思う。特に主婦は「こうした方がより快適に過ごせる」ということを思い付きやすい。だから私は、本当は主婦こそ起業するべきだと思っているんです。

濱田:なるほど。女性の発想がビジネスに繋がったら面白そうですね。

小野:私も起業して実感したけれど、何か新しいことをやろうとする時ってすごくわくわくしますよね。それに、ビジネスと聞くと一歩引いてしまう人がいるけれど、リスクを抑えればお小遣い程度の金額ではじめられるし、必要なのはアイディアと覚悟。もっとみんなやってみたら良いと思います。

濱田:女性は覚悟を決めたら強いですからね。

小野:これは高校時代の先生が言っていた言葉なんだけど、「女性は子宮でものを考える」らしいです。意味がわからないですよね(笑)。でも、子どもを産んだら分かるようになります。頭で考えるんじゃなくて、お腹の下の方で考えるというか、直感というか。そういう感覚で覚悟をすると、女性は強いですよね。

濱田:結婚後の生活というと安定を求めるイメージですけど、今回お話を伺って結婚して出産してこそ、アグレッシブに生きていくというのも素敵だなと思いました。

小野:結婚は安定じゃないですよ(笑)。だって、他人同士が一緒に暮らして、一から生活を作っていくんだもん。心の拠り所にはなるけれど、それを作るのも自分たちの努力。ゴールインとは言うけれど、ゴールではなくてそれが新しいスタートになるんだと思います。

「自分の能力を正しく判断出来ていないからこそ出来ることが沢山ある」

濱田:普段、留学生の就職活動のサポートをされている小野さんは、ここ数年企業が海外経験のある学生や留学生の採用を増やしている傾向について、どう思われますか?

小野:日本にとっては必要なことだと思います。そうしないと、国際化を進める世界の流れから、日本は取り残されてしまう。こういう仕事をしていると、「日本で留学生の採用が増えれば、日本人学生の就職先がなくなるじゃないか」って言われることがあるんです。でも、だからといって守りの姿勢に入ってしまっては、日本の競争力が弱くなって日本人がますます萎縮してしまうだけだと思うんですよね。もっと積極的に海外の人材を取り入れて、逆に日本の若者もどんどん海外に出て行けるようになれば良いなと思います。

濱田:そうですね、日本の若者も国内だけじゃなくて海外を視野に入れることで、可能性が広がりますもんね。

小野:不景気で国内の働き口が減っていると言うけれど、海外に目を向けると可能性が広がりますよね。日本の中で少ないパイを取り合うんじゃなくて、海外に出て挑戦してみるのも一つの選択肢なんじゃないかな。

濱田:では最後に、これから社会に出る若者に向けて何かアドバイスをお願いします。

小野:若いうちは、若さならではの勢いを大事にして色んなことに挑戦して欲しいですね。人は年を重ねると、ある程度自分の能力を客観的に判断出来るようになってきます。「自分の能力はここまでだ」とか「この先にはリスクがある」とか。それは良いことでもあるんだけれど、自分にブレーキをかけてしまうことにもなるんですね。でも、若い時はそれがない。自分の能力を過大評価してしまうというか、身分不相応な自信があるというか。もちろんその分失敗も多いけど、自分の能力を正しく判断出来ていないからこそ出来ることが沢山あるんです。だから若いうちに色んなことに挑戦して、どんどん失敗もしていって下さい。そこから必ず得るものがありますから。


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