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大熊あゆみさん

濱田 真里
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神奈川県川崎市育ち。高校中退後、大検で高校卒業資格を取得。札幌大学及び北海道造形デザイン専門学校卒業し、東京のデザイン事務所にて3年間勤務した後、来タイ。1999年‐2005年、財団法人バーンロムサイにてスタッフとして勤務。2007年、土の家の廃墟を改造しカフェをオープンし、現在に至る。

「自分の好きな世界をデザイン出来て、楽しくてしょうがない」

濱田:13年前に大熊さんがタイに来られたきっかけは何ですか?

大熊:20代後半に旅行でチェンマイに来てすごく好きになって、ここに住みたいと思ったんです。だから日本に帰ったその日からタイ語の勉強を始めました(笑)。それから3年ほどデザイン事務所で働きながら、お給料をほとんど貯金して、3回目にここに来た時にはもう住み始めましたね。タイ語がちょっと話せるようになった1年目から、HIVに母子感染した孤児たちの生活施設で働きました。そこで6年半働いた後、日中は病院の通訳の仕事、夜はカフェの運営という生活を4年続けていたんですが、今年になってようやくカフェ1本にすることが出来たんです。

濱田:二足の草鞋ですね…大変じゃなかったですか?

大熊:そうですね。病院では毎日日本人の患者さんが来ていたので、なかなか抜けられなかったんです。だからと言って、カフェも放っておけない状況で。というのも、今使わせていただいているこの建物、実は取り壊されてしまう予定だったんですよ。カフェとして使うのなら、すぐにでも手を付けなければいけない状況だったので、「ここでカフェをやろう!」と思い立ってから修繕をはじめて、4ヶ月後にはオープンしました。全然計画性無いですよね(笑)。いつも好きなことをただタイミングと直感に合わせてやっているだけなんですよ。

濱田:壊される予定の施設を生き返したわけですね!すごい!

大熊:実はこの土で出来た建物、もともとはチェンマイ大学のワークショップで作られた物だったんです。散歩中に偶然見つけて一目惚れしてしまって、面白そうだから使わせて下さいと大学にお願いしたのがカフェを始める事になったきっかけ。この空間、窓も天井も丸くて角がないでしょ。こういう空間が私の理想だったんですよ。

濱田:すごく居心地の良い空間ですよね。三匹の子豚とか、ハリーポッターに出てきそうな雰囲気!ちなみに、カフェ1本に絞られてからはいかがですか?

大熊:もう楽しくてしょうがないんです。やっぱりこれが好きなことなんですよね。自分の好きな世界をデザインして、好きな物を置く。そもそも私がカフェを始めたのは、自分の作った料理を食べてもらいたいとかそういうことではなくて、色んな人たちが出たり入ったりしながら交流できるようなコミュニティーセンターを作りたかったからなんです。だから、今こうして自分のカフェにチェンマイの素敵なアーティストたちの作品を置いて、それを元に人々が繋がっていくのが楽しいんですよね。

「色んな人たちとの繋がりの中で、自然と自分のやる事が出て来た感じ」

濱田:チェンマイって、こじんまりしていて素敵な町ですよね。

大熊:そうなんです。ちょうどいい町の大きさなので、みんな繋がっていますね。日本人に限らずに、タイ人も他の外国人も、皆仲良くなれるし、何かやろうと誘うと「じゃあやろうか」と盛り上がる人も近くにいるんです。そんな風に何でも出来るのがこの町の良さかな。東京やバンコクだと町の規模が大きくて、色んな人がいる分、そうやって人と繋がるのは難しくなると思うんですよね。

濱田:確かに人と繋がるというのは、チェンマイならではなのかもしれませんね。

大熊:こっちは繋がりも簡単に出来るし、そういう繋がりを生かしてイベントをやったりもするので、大抵みんな知り合いなんです。逆に悪い事はできないですけどね(笑)。カフェも沢山の人に手伝ってもらって出来たんですよ。だから今まで全部自分一人でやってきたなんて思わないし、色んな人たちとの繋がりの中で、自然と自分のやる事が出て来た感じかな。

濱田:まさに人脈とか繋がりが渦巻いている町なんですね。

大熊:そうですね。私はチェンマイという町にこだわるつもりは全然ないんですが、最近はこの町だからこんなに面白い関係が出来ているのかなと思っています。

「自分にとって大事な物を大切にするために、使わない物や無駄だと思う物は手放す」

濱田:大熊さんが生きていく上で大切にされている軸は何ですか?

大熊:こだわりを作らないようにしていることですね。あまりにも一つの事にこだわりすぎると、自由って生まれないですよね。だからまずはこだわりを無くして、自分が自由になる。そうすると相手も自由になるから、色んな人やものを受け入れやすくなるんですね。この店も同じ。お客さんのターゲットは決めていないし、メニューもあんまりこだわらないようにしています。こだわりを出しすぎると、入りづらくなってしまうと思うんですよね。それよりも、普通の家に遊びに来るような感覚で皆に来てもらえるようにしたい。そういうスタンスで作っているから、小さい子も年を取った方も若い人も来られる空間になっているのだと思います。

濱田:なぜ、そのような考え方に行き着いたんですか?

大熊:元々自由でいる事が好きで、人に束縛されたり色々言われたりするのが嫌いなんです。私も結構嫉妬深かったり、考えすぎちゃう部分があって、苦しんだ時期も沢山あったんですね。だからこそ、まずは自分がこだわらないようになろうと思って。

濱田:まずは自分から変わろうという姿勢が素敵です。

大熊:そう思えるようになったのも、つい最近のことなんですよ。それまでは色々こだわって、何でも溜め込んでしまうタイプでした。でも今は、本当に大切なもの以外は出来るだけ削りたいと思っています。持ち物も3分の2くらい手放したんですよ。これからはもっと大切な物と向き合いたいと思って。

濱田:手放すことも大切ですね。

大熊:周りに色々ありすぎると、自由を失っちゃうんですよ。どうでも良いはずの物に余計な時間を費やしてしまって、大切な物に目を向ける時間がなくなるというか。だから自分にとって本当に大事な物を大切にするためにも、必要のない物は手放して周りの人に差し上げたりすると良いかもしれません。他の人が喜んで使ってくれるかもしれないしですしね。そうすれば時間をもっと有効に使えるし、物へのこだわりも無くなってすごく自由になりますよ。

濱田:最後に学生に向けて、メッセージをお願いします。

大熊:一つ一つの事にこだわるということは、その分自分の時間が削られていく事。どうせならもっと自分の好きな物とか、大事に思っている人との関係とか、そういう物に時間を費やすべきだと思います。大切な物って、そんなに沢山この世の中にあるわけじゃないですから。


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