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長谷川峰子さん

濱田 真里
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東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行で人脈を得るが、結婚退職し専業主婦に。子育てが一段落した後、さつき会(東大女子卒業生の会)の代表理事を務めたことにより人の輪が広がる。40歳で再就職後、43歳で官公庁文書専門の翻訳会社に転職。50歳でベンチャーに移り、ある国際会議でインド人女性との出会いをきっかけに、インドストール直輸入販売の会社を起業。

「ビジネスパートナーとの出会いは本当に偶然というか、運命的な出会いだった」

濱田:インドから直輸入したストールの専門店を経営されている長谷川さんですが、今の事業をはじめられたきっかけは何だったのでしょうか?

長谷川:きっかけはビジネスパートナーとの出会いですね。当時参加していた女性支援のNPO活動で行った韓国の国際会議で知り合いました。インド人の彼女はカシミール地方の戦争が原因でストールが売れなくなった職人の生活を安定させ、世界に販売するビジネスをしていて、ちょうど日本に進出するためのパートナーを探していたんです。一方私もその頃インド関係のコンサルティングをするベンチャー企業に勤めていて、日本で売るインドの品物を探していたところだったから、お互いに求めていたものが合致してすぐに意気投合しました。本当に偶然というか、運命的な出会いでしたね。

濱田:その時の出会いがお店の立ち上げに繋がったんですね。

長谷川:そう。でも最初から自分のお店を持とうと思っていたわけではないんですよ。初めは会社の一事業としてやっていました。だけど社長が「せっかく自分で仕入れ先を見つけたのだから起業してみては?」とアドバイスをして下さって。それで自分で会社を興して事業をはじめることにしたんです。起業に至ったのはビジネスパートナーとの出会いだけじゃなくて、NPOの活動を通じて出会ったパワフルな日本人女性達からの影響もありましたね。

「ずっと専業主婦をしてきたから、仕事をするのは諦めていた」

濱田:女性支援のNPOでの活動、そして起業…まさにばりばり働く女性という印象です。

長谷川:確かにNPOの活動に参加したり、ベンチャー企業で働いていたりしてからは仕事に対する意識が高くなったと思います。でも、それは50歳になってからの話。40歳までは専業主婦だったんですよ。

濱田:そうだったんですか!

長谷川:私は結婚するのが早かったんです。大学を卒業して働いたのは2年ほど。31歳になった頃にはすでに3人の子どもがいました。子どもが大きくなってもう一度働きたいな…という思いもあったけれど、再就職先も無いので正直諦めていました。

濱田:そんな長谷川さんがもう一度働きはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

長谷川:それは学生時代の後輩から投資顧問会社のアルバイトの話をもらったことでした。会社が家から近かったし週に2回くらいの勤務だったから、これなら主婦の私にも出来るかもしれないと思ってはじめたんです。

濱田:最初はアルバイトからはじめられたんですね。

長谷川:そのアルバイトは1年半で終わってしまったんですけどね。でも働き始めたことを近所の人に話していたら、アメリカのりんごを輸入するビジネスをしている近所の人に「次はうちで働きませんか?」と誘っていただいて。それで今度はそこで働きはじめました。アルバイト時代は週2回だった勤務が週3,4回になり…そこで働いている間に家族も私も仕事をする体制が整いましたね。英語やパソコンも使えるようになったし、良い経験だったと思っています。

濱田:その時に英語を身に付けられたんですね。

長谷川:英語はそこでも使いましたが、その後転職した翻訳会社でも学びました。英語は学生時代以来使う機会がなくてすっかり忘れていたので再勉強には苦労したけど、あの時に克服することが出来たのは大きなことでしたね。仕事の経験がほとんどなかった私にとって、英語だけが再就職の切り札だったんですよ。

濱田:再就職や転職…もともと専業主婦だったなんて信じられないほど色々な経験をされていますね。

長谷川:早く結婚して子どもを産むと20、30代は子育てで終わってしまうけれど、40歳からの人生が長いですからね。専業主婦だった頃は仕事一筋の女性や仕事と家庭を両立させている女性を見て、自分はこれで良かったのか?と思うこともありました。でもその分家の仕事も子育ても悔いなく終えることが出来たし、仕事と家庭を分けたことでどちらも集中して力を注ぐことが出来たので今は良かったと思っています。

「出来ることをやっているうちに自分の意外な才能に気付いて、さらにステップアップできることもある」

濱田:十数年間仕事から離れていた自分は働けるのだろうか?と不安を持つ専業主婦の方もいますが、英語やパソコンの技術に磨きをかけステップアップされている長谷川さんの姿は、そういう方たちに勇気を与えると思います。

長谷川:私も最初から自信があったわけではないんです。でも英語やパソコンは、実際に使えば上達するし自信がつく。ネットショップも接客販売も、やってみて初めて自分に合っていると気づきました。できることをやっているうちに能力が高まり、自信がついて次の段階に進めるんですよね。その間に自分の意外な才能に気付いて、さらにステップアップできることもあります。

濱田:転職や起業と新しい環境に次々に挑戦される長谷川さんですが、その一歩を踏み出す原動力は何なのでしょうか?

長谷川:それは人との出会いや人脈です。私の場合、専業主婦を辞めてアルバイトをはじめたのも転職したのもほとんど大学や勤めていた会社の先輩や後輩から声を掛けて頂いたのがきっかけなんですよ。お店をはじめた頃も知り合いの方が沢山いらして下さって随分助かりました。人との繋がりは本当に大切ですよね。

濱田:そういった人との繋がりを作る上で心掛けていらっしゃることはありますか?

長谷川:とにかく色んなところに顔を出して何でもやってみることですかね。NPOの活動もそうですが、特にお勧めなのは大学の同窓会。職業も様々だし、上から下まで幅広い年齢層の方々と仲良くなれますよ。私は幹事も勤めていたというのもあってかなり人脈が広がりましたね。そこで出来た人との繋がりには起業した今でも何かと助けられることが多いです。

濱田:確かに出会いや経験はいつどこで役に立つか分かりませんよね。そういう意味では何でもやってみることが大切ですね。

長谷川:「何も無駄なことはない」と良く言うけど、本当にそう思います。専業主婦の経験もこれまでやってきた仕事での経験も、全部自分のためになっているんですよね。計画してやってきたわけじゃないけれど、目の前のことを一生懸命こなしていけば自分の納得するところにいつの間にか辿り着けるのだと思います。

濱田:会社に就職しても自分のやりたい仕事はこれじゃないと辞める若者も多いですが、目の前にあることを一生懸命こなしていく中で初めて見えることもありますよね。

長谷川:そうですね。私が大学を卒業した頃は4大卒の女子を採用してくれる会社なんてほんの一握りでした。だから入りたい会社に入るのではなくて、入れる会社で何とかやっていくという感じ。そもそも女性じゃなくても最初から理想の環境で働ける人なんてなかなかいませんよね。だからまずは目の前の仕事に一生懸命取り組んで、そこで何かしら学んでから次に進む。これからはますます流動性が高い社会になると思うので、そういう生き方も一つの選択肢ではないでしょうか。


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