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小林優さん

濱田 真里
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東京都出身。文化服装学院服飾専攻課程オートクチュール専攻卒業後、アパレルメーカーで働くが忙しさに追われ、一度自分の生活・これからのことなどを見つめ直すために転職を決意。その頃、国際平和学の学びのためコスタリカに行っていた人と出会い、時間の使い方・生き方など色々な可能性があることを知る。その人との出会いもあり、自分の特技を持って何か人の役に立てることが出来ないかと考え始める。そして現在働いている施設(ban rom sai)のボランティアの求人と出会い、パタンナーとして活躍中。

「全てが無駄なく整って運ばれた」

濱田:日本でアパレル関係の会社で働かれていた小林さんが、タイの孤児院でボランティアに携わるようになったきっかけを教えてください。

小林:働いていた会社を辞めた後、チェンマイで働いている友達に会いに旅行に来たのがきっかけです。その時にどこに泊まろうかと調べていたら、孤児院を支援している施設の中にあるゲストハウスを見つけたんですね。泊まるだけで子どもの助けになるならいいなぁ、と思っていたら更に縫製工場も運営していることが分かって。しかもちょうどアパレル実務経験のあるボランティアを募集していたんですよ。会社を辞めて時間もあったので、それなら私にも手伝えることがあるかもしれないと思ったのが始まり。

濱田:すごい偶然だったんですね。

小林:色々なタイミングと条件が揃って、全てが無駄なく整って運ばれたという感じ。社会人になると海外で生活したいと思ってもなかなか出来ないと思うんです。だから色々なタイミングが合って、こうして海外に出られたのはラッキーだったと思います。

濱田:でも、いくらタイミングが合ったとはいえ、迷いはなかったんですか?

小林:私、タイはもちろんアジアには一度も行ったことがなかったんですよ。アジアと言えば、食事をしたらお腹が痛くなるとか、ちょっと危険なイメージがあって。だから自信はありませんでしたね。それもあって、まずは旅行で行って、様子を見てみようと思ったんです。

濱田:実際に行ってみてどうでしたか?

小林:それがすごく楽しかったんですよ!ご飯は美味しいし、なんだか皆のんびりしているし。すごく暑かったけど、それさえも心地よく感じられて。これならやっていけると思って来ることにしたんです。

濱田:随分即決だったんですね!その時に不安はなかったんですか?

小林:それが不思議となかったんですよね。基本的には保守的な人間で、チャレンジとかしないんですけどね。それだけ旅行が楽しかったんだと思います。

濱田:それはすごいですね。私だったら色々考えてしまうと思います。

小林:でも、新しいことをする時って意外と不安は感じないものなのかもしれない。勿論全くないわけじゃないけれど、それが理由で進めない時はタイミングじゃないというか。そういう意味でもタイミングは本当に大切だと思います。

「何のために働いているんだろう?」

濱田:学校を卒業してから日本ではどのくらい働かれていたんですか?

小林:6年間ですね。転職は2回したけれど、ずっとアパレル関係でパタンナーとして働いていました。

濱田:転職も経験されていたんですね。

小林:アパレルというのは、転職が珍しくない業界なんですよ。特にパタンナーは個人の技術があってなんぼの世界。手に職があるから、選ばなければ仕事には困らない職業なんですね。不安なくタイに来られたのも、いつでも日本の仕事に戻れるという安心感があったからかもしれません。

濱田:タイで働いてみて、日本との違いを感じることはありますか?

小林:一番違うのは時間の感覚かな。日本とは比べ物にならないくらい、タイでは時間が大きく、ゆっくり進むんですよ。日本では毎日分刻みで仕事をしていたけれど、ここでは一日にやることがざっくり決まっているくらい。そんなにガツガツ働かなくても生活していけるということを体験できたのは大きいですね。

濱田:確かに日本とタイでは働き方が大きく違うでしょうね。

小林:日本では徹夜、終電帰り続きの働き方をしていたから、尚更そう感じられたのかもしれません。でも、そこまで行くと何のために働いているのか分からなくなりますよね。実は前の会社を辞めたのも、そういう生活に限界を感じたから。会社にいた時も、まずは自分が変わらなきゃいけないと思って皆がまだ働いている中一人で早めに帰ったり、色々試みたんです。でも、それだけだとやっぱり限界があって。それなら一旦仕事を辞めて、心機一転、もう一度自分のライフスタイルを考え直そう思ったんです。28歳の時のことでした。

濱田:これまで沢山の女性にお話を伺ってきましたが28、29歳の頃に人生の転機を迎えられる方が多いような気がします。

小林:あまり意識したことはなかったけれど、確かにそれはあるかも。その時期にまだ結婚していない女性は特に。若さや体力だけじゃ乗り切れないことがあるということを知るのだと思いますよ、きっと(笑)。

「人は皆繋がり合いながら生きている」

濱田:タイに来て、人生観や仕事観など何か変わったことはありますか?

小林:ここに来て一番実感したのは、人は皆繋がり合いながら生きているのだということ。
例えばアパレルの仕事にしても、デザインする人、実際に形にする人、それを売る人そして買う人…というように、それぞれやるべきことや役割があって、一人ひとりが繋がっている。自分もその繫がりの一部に属していて、だからこそ、パタンナーとして自分の役割を果たす責任があるのだと思うようになりました。

濱田:そう思うようになったきっかけは何だったんですか?

小林:それはやっぱり、孤児院での生活だと思います。私は今、ボランティアとして働いているので、お給料はほとんど貰っていないんです。でもその分のお金が、目の前にいる子どもたちの薬代や教育費に使われているのだと思った時、子どもたちとの繫がりをよりリアルに感じられたんですね。

濱田:それはまさに、ここに来たからこそ得られた視点なのかもしれませんね。

小林:日本では、日々の仕事に追われて余裕がなくなるのだと思います。自分に対しては勿論、相手や物事に対しても。自分のことで一杯いっぱいになってしまうんでしょうね。そうなると、繋がり合いながら生きていることを忘れてしまう。でも、それって本末転倒なんじゃないかな。日本にいただけだと、そういうことには気づけなかったかもしれない。

濱田:海外に出てこそ、気づけることってありますよね。

小林:やっぱり海外に出ると視野が広がる。学生の頃って、「世界を見た方がいい」とか「一度でいいから日本を出たほうが良い」と色んな大人に言われますよね。でも、そういうのって頭で分かっていても、実際に自分で体験してみないと分からないことなのだと思います。

濱田:最後に、日本の学生に向けてメッセージをお願いします。

小林:是非自分のやりたいこと、やるべきことを精一杯、責任を果たすつもりでやってください。先に何があるか分からないけれど、進んで行く先に必ず光は見出せると思うので、頑張って下さい。


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