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網本友加さん

6月 4th, 2019|Comments are off for this post


ドイツ駐在員時代に視野が広がり、25歳の誕生日に退職を決意

濱田:現在台湾で暮らされ、ドイツでの駐在経験もお持ちですが、元々海外就職に興味を持たれていたのでしょうか。

網本:私は京都生まれで大学卒業まで関西で育ち、関西が大好きだったので一生離れないつもりでした。だから海外就職にはあまり興味を持っていなかったんです。新卒で入った会社も、地元の教育関連企業。でも、突然入社2年目でドイツのデュッセルドルフへ転勤となり、強制的に自分の殻を破ることになりました。

その駐在員生活でとても視野が広がり、自分が本当にやりたいことについて考えるように。仕事は好きだったのですが半年間ほど悩み続けて、2年の駐在期間を終える頃に転職を決意しました。私は学生時代から映画が大好きで、いつか自分でシナリオを書いてみたいと思っていたんです。

ちょうど25歳の誕生日に「やっぱりやりたい!」と強く思い、その日のうちに上司に言いました。残るように説得されましたが、意志が固いことを理解し、最後には応援してくれましたね。今でもその時の上司とは仲が良いです。

帰国後は東京にある出版会社で働く傍ら、シナリオライター育成学校に通いました。出版業界に入って思ったのが、「私がしたいことは書くことだけど、紙である必要はない」ということ。それよりもインターネットの方が早いスピード感でできそうだと思い、ネット上でのコンテンツ制作に興味を持つように。

1999年当時は、日本ではPHSや携帯電話、PCやインターネットが一般向けに普及し始めた頃でした。今後はこれらのツールを利用したビジネスが増えるはずだと思い、携帯電話の情報コンテンツを作成するベンチャー企業に転職。映画関連の記事をポケットベルや携帯電話に配信する仕事ができて本当に楽しかったですね。

時代の流れもあり、入社時は私を含めて18人しかいなかった社員が爆発的に増え、あっという間に100人、数百人規模に拡大して数年後に上場。毎日がお祭りのようで、深夜まで残ってがむしゃらに働きました。今は体力的にこの働き方は厳しいですが、この経験を乗り越えたことは自分の自信になっています。この会社で働いた12年間は、インターネット業界の拡大や会社の成長を肌で感じながら仕事ができ、とても充実していました。

38歳で台湾に移住して、自分で一から事業を立ち上げた

濱田:台湾に移住をされたきっかけを教えて下さい。

網本:夫が台湾人なので、結婚を機に移住しました。元々同僚だった彼は先に退職して台湾に戻り、家族の事業サポートや自身の事業の立ち上げを行っていました。私は当時、仕事は楽しかったのですが、もっと混沌とした場所で何か新しいことをやってみたいという気持ちを抱いていて。

彼が台湾人だったことや結婚したことは、自分が外に出ることを後押ししてくれましたね。37歳で辞めることを決意し、38歳で退職して台湾に住み始めました。移住後は、國立台灣師範大學の中国語センターに9ヶ月通い、中国語の勉強をしました。

こちらの家族との会話は中国語と台湾語なので、必要に駆られて始めるように。私はせっかちな性格ですぐに効果を出したくなってしまうのですが、言葉は地道に習得するしかないことを痛感しました。

濱田:現在はどのような事業をされているのでしょうか。

網本:当初はインターネット関連の仕事が中心でしたが、今は日本の食文化や伝統工芸品のPRをメインに、地方自治体や日系飲食企業等の台湾展開をサポートしています。自分で事業を立ち上げるのは大変でしたが、この歳で初めてのことに挑戦しても、やればちゃんと身に付くので面白いですよ。

今後もずっと台湾に居続けるかわからないからこそ、どんな場所でも生きていける人間になりたいと思っています。台湾人は自国のマーケット規模が約2300万人程度という現実を知っているので、「ここ以外でも生き抜く力を付ける」という意識がすごく強い。だから語学力も高く、移住している人たちも多いですね。

私は台湾に住み始めてから、日本人は自国マーケットに依存しすぎだと思うようになりました。今はまだ大丈夫かもしれませんが、今後日本のマーケットが縮小した時、どうなるかわかりません。日本の商工会議所でお話を伺うと、東京よりも大阪や地方の中小企業の方が海外進出に真剣です。危機感がある方が、人は動き出せるのでしょうね。

若い時に挑戦したからこそ、自分が幸せであるために必要なものがわかるように

濱田:台湾に移住されてから、網本さんご自身にどんな変化がありましたか?

網本:以前は「あれもこれも欲しい!」という気持ちが強かったのですが、今は「自分はこれだけあれば十分幸せ」という基準がわかるようになってきました。歳を重ねるといらないものがわかってきて、シンプルに生きられるようになるのかもしれません。

でも、自分にとって必要なものや大切なものは、色々試した結果わかるもの。やりたいことをやらずに、「私の幸せはあそこにあったのかも……」と晩年に後悔しても取り返しがつきません。だからこそ、挑戦できる時にしっかり挑戦して良かったなと思います。