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【特別企画】メディア業界の女性の立場 〜日本女性学習財団・村松理事長が語る、ジェンダーにとらわれない社会とは

9月 13th, 2016|Comments are off for this post


>>前編(女性の運命を解き放て 〜日本女性学習財団 村松理事長が語る、メディアの変え方)から続く……

日本のメディア業界は、女性進出率が世界最低レベル

——世界と日本のメディア業界の違いを教えて下さい

村松泰子理事長(以下、村松):メディア業界の女性進出率はかなり増えてきたのですが、全体の数字では約20%と非常に少なく、世界の中では最低レベルです。昔から「なぜ日本のメディア業界には女性が少ないのか」と他国から言われるほど。私がNHKに勤めていた時も、海外から日本を取材にきた女性の記者やディレクターがよく私のところへ来て、「どこに行っても男性ばかりなのですが、女性はいないんですか?」と聞いてきました。

私がいた放送業界だけではなく、新聞業界でもこの状況は同じです。その理由は、日本の新聞の多くは朝刊と夕刊を同じ会社が作っているため。この仕組みは世界では少数派です。例えばアメリカでは、朝刊と夕刊は別の会社が発行していますが、日本では一社で両方発行します。テレビ局でも海外では放送人がバケーションを1ヶ月くらい取ったりする一方で、日本では休みどころか夜遅くまで猛烈に働くパターンになりがち。海外では日本のように働かなくても発信できているのだから、日本も変われるはずです。

「優秀な人」の定義を変えよう

——2015年に『報道職のワーク・ライフ・アンバランス』という本を共著で出版され、テレビ局で報道に携わる21人の男女の管理職と9人の30代男女へのインタビュー調査をされていました。彼ら・彼女たちの働く意識は変わってきているのでしょうか?

村松:そうですね、30代の意識が変わり始めていて、男性も仕事一辺倒ではなく、私生活も大事にする人が増えていると実感しました。男性が作ってきた会社の仕組みの中に後から女性が入ったので、出産・育児という要素をそのまま加えると、やはり無理が生じます。今までは24時間働ける人が優秀と言われる文化でしたが、そうではなくもっとバランス良く働ける人が優秀だと認識されて欲しいですね。そのためには、柔軟な働き方ができる新しい企業が出てくる必要があると思います。

「男性なのだから」という差別

——女性だけではなく、男性も柔軟に働く環境が求められているのですね

村松:そうですね。近年はジェンダーに対する関心が高まっているので、女らしさが強調されて批判を浴びることはありますが、男らしさを強調して批判を集めることは少ない気がします。大学時代に私の指導した学生が以前に行った調査でわかったのですが、最近の先生たちは男女平等を意識するように指導されているので、学校教育の中では「女だから〇〇しなくていい」とは言わなくなってきています。でも、男子に対して「男だから頑張れ」と言うことは問題でないと思っているようです。これが男性にも女性にも差別になっていることを自覚していない人がとても多いのです。

——確かに、就職活動でも男性のほうが「将来を考えてしっかりした職を探しなさい」と言われがちです

村松:男性の場合、人に頼ったり弱みを見せたりすることをよしとしない教育を幼い頃からされているため、なかなか人に頼れないんです。実は、日本の自殺者は男性の方が圧倒的に多い。あまり話題にあがりませんが、「女性らしさ」だけではなく、「男性らしさ」を押し付けられることも差別なのだと理解して欲しいと思います。よりジェンダーにとらわれない社会になれば、女性だけではなく男性もプレッシャーから外れて、楽に生きられるようになるのではないでしょうか。

発信できる権利を思い切り使おう

——最後に、20・30代の人に向けてメッセージを下さい

村松:おかしいと思うことや気になることがあったら、ご自身のもっている手段を使ってぜひ発信して下さい。それに対する議論や反論がくるかもしれませんが、それがあっても良いと思います。発信したくても、国や時代によって意見を言えない場合だってあります。SNSを通して個人が自由に発信できる現代は、非常に恵まれているのではないでしょうか。

国連機関であるユネスコで取り上げられた、「コミュニケートする権利」という考え方があります。これは、「民衆自身がコミュニケーションの手段を利用し発信する権利がある」というもので、表現の自由よりさらに大きな概念です。私たち一人ひとりは、この「コミュニケートする権利」をもっています。ぜひ存分に活用して欲しいですね。