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並木麻衣さん

濱田 真里
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「日本の外で考えてきたことをどう実現すればいいか、今も悩み続けている」

濱田:浪人時代の転機がキッカケでアラビア語を専攻して、イスラエルとパレスチナに留学。2度目の転機というのは、留学から帰国された時でしたよね?

並木:4年前の転機は、パレスチナとイスラエルの留学から日本に帰国した時でしたね。海外にいると、自分に出来ることがいっぱいあるような気になったりしない?

濱田:それ、分かります!私も世界一周していた時は、したいことリストをたくさん作っていました(笑)

並木:私もね、留学中はパレスチナ問題に対して、帰国後に自分にできることとか、やりたいことを色々考えていたんです。でも、留学している間にももちろん日本社会はそのまま変わらず動いていて、私が日本の外で考えてきたことを実現する余地はなかった。外にいた時には「日本にはアレとコレが必要だ!」って大きなことを思っていたのに、現実を突きつけられてジタバタする感じ。「自分には何もできない」という壁にぶつかったのが、4年前の転機でした。自分には何ができるのか、日本の外で考えてきたことをどうしたら実現できるのかすごく悩んだし、今も悩み続けています。

濱田:今も悩み続けているんですか?

並木:そう。だから4年前に帰国して、「何もできない」って思ってから、パレスチナ問題や中東問題に関しては、私の中でずっと凍結してきたんだよ。今年からやっと、少し動き始めたところ。

濱田:そうだったんですね。今はどんなことをされているんですか?

並木:イスラエルやパレスチナの映画の上映会をしたり、中東女子を集めて合コンをやったりしています(笑)。チャリティ・イベントとして。

濱田:中東女子! 麻衣さん、面白すぎます(笑)。

並木:そうそう、出会いがあるって楽しいよね。最近は、自分がみんなに考えてもらいたいと思っている社会問題と、何か面白いことをどうやって結びつけるかを考えることに、ワクワクしています。面白くないと続かないこと、知ってもらえないこと、感じてもらえないことって、あると思うんだよね。「ムズカシイ」問題も、入口はどんなキッカケでもいいんだと思う。入口としての「面白いこと」をどうやって作っていくか、自分には何ができるか、ということを考えたりしています。

濱田:麻衣さんにとっての軸が、解決したい、考えてもらいたいと思っているパレスチナ問題ということですか?

並木:軸の一つかな。パレスチナ問題というのは一つの切り口なんだと思う。自分の目指したい社会を実現するために、どういう切り口で攻めていくか、という問題。私にとってパレスチナ問題というのは、その1つ目の切り口。実際に1年を過ごした場所で、ずっと研究してきたところだから、それだけの重みを感じてしまったんでしょうね。私がとてもお世話になった現地の人たちの暮らしに、少しでも希望や選択肢、可能性が加わればいいな、遠くにいる私たちも、何かお手伝いができたらいいなと思います。

「自分の心が病んでしまうくらいだったら、辞めてしまったほうがいい」

濱田:行動することって大切ですよね。私の周りにも海外で気づきを得て、何か行動を起こしたいと思っている若い人は結構います。でも何から行動していけばいいのか分からなかったり、実際に行動に移すことを難しいと感じてしまうんですよね。だから結局、大学3年生になったら生活のためにとりあえず大手企業への就職を目指す人が多くて。麻衣さんは日本に帰国されて、就職活動はどうされたんですか?

並木:就活はしませんでした。留学中にハンガリーに行こうとしていた時、出発前に何気なく立ち寄ったエルサレムのホステルで、たまたま日本人に会ったんですよ。ネットを通じてNGO/NPOを支援している「ユナイテッドピープル」という会社の関根社長だったんだけど、彼と意気投合して、パレスチナについての色々な話をしていたら「いいね、君、採用!」って言われて(笑)。「嘘だぁ~」って思ったんだけど、帰国したらメールが届いていたんですね。「うちでインターンをして、ゆくゆくは社員になることを検討しませんか?」って。当時の私は大学院に行って、パレスチナ問題についてもうちょっと研究していくつもりだったのね。でもまぁ、社会に出てみるのもいいかなと思って、インターンに行きました。

濱田:インターンを通じて、研究の道ではなく、社会に出る道を選んだということですか?

並木:実際にインターンとして働いてみて、私は「社会に働きかける」ということがやりたかったんだ、と実感したんです。私は留学から帰ってきて、自分が現地で感じてきたことをもっと色んな人に知ってもらって、パレスチナに対するステレオタイプをなくしていくにはどうしたらいいのか、ずっと考えていたのね。そう考えた時に、「じゃあ、私が働きかけたい相手はどんな人たちなんだろう? 働きかけるなら、その人たちのことをもっと知らなきゃいけない」と感じたんですね。やっぱり、実際に触れ合うことでしか見えてこない解決策があるはずだからね。自分で体験してみよう、と思って。だから研究の道ではなくて、会社員として一度社会に出ようと思いました。この選択は正解だったと思っています。

濱田:実際に働いてみて、どうでしたか?

並木:会社員になったら、大変なことがいっぱいで(笑)。会社員になるというのは、システムの中に組み込まれるということだと思うんです。自分が「こうしなきゃだめだ!」と思っていても、会社の中で「それは違う」って結論が出たら、どんなに自分が反対でも先ずは納得して、目標の達成のために精一杯動かなくちゃいけない。自分の仕事にダメ出しが出るとへこむし、仕事はなかなか終わらないしね。会社の中で、自分がすごく大事な仕事をしていたのは分かっていたんだけど、自分の方向性と違うことをしなきゃいけなかったり、そのために自分のやりたいことをする時間が取れなかったり。そうすると、「私が本当にやりたいのはこれじゃないの!」というジレンマが生まれるることもある。世の中には、そういう想いを抱えながら生きている人がたくさんいるんだと思う。

濱田:麻衣さんの方向性とか、本当にやりたいことって何だったのでしょうか?

並木:私、ひたすら現場主義の人間なんですよ。だから、NGO/NPOを支援している自分の仕事はすごく大切なんだと分かっていたし、好きでもあったんだけど、「自分の力を100%活かせるのはここじゃない」と漠然と考えていました。やっぱり私は、自分が見つけた問題意識を元に何か行動を起こしながら、現地の人たちと直接触れ合いたかった。それを24、25歳の小娘がやるのは早すぎるかもしれないけど、やっぱり人にはそれぞれのタイミングというものがあるんだと思う。私も最初、3年は会社で頑張ろうと思っていたし、「ここで降りたら負けだ!」と思っていたこともあるんだけど、それで自分の心が病んでしまうくらいだったら、辞めてしまったほうがいいなと。だから「じゃ、現場に出るんで!」って言って辞めました。ちょうど今から1年くらい前の話かな。

「経済的に大変だったとしても、やりたいことがある人はなんとかしちゃう」


並木:思い切って辞めたけど、最初は怖かった。「会社を辞める」と決断するのも大変だったんです。私はその頃婚約していて、彼と一緒に暮らしていたから、「この暮らしを守らなきゃ」と思っていたんだよね。つまり、ちゃんとお給料をもらって生活費稼いで、彼との時間も大切にして、安定した暮らしを守らなきゃ、って。だから、当時は家と会社をひたすら往復する毎日。家と会社の往復は、一見幸せそうに見えたかもしれない。でもやっぱり私にはリスクを取ってでもやってみたいことがあって、それを後回しにしなきゃいけない状況は、私にとっては辛かったんですよね。そしたら彼も私のフラストレーションに気づいていて、ある時にグサリと言われたんですよ。「君のフラストレーションも分かっているし、この状態で一緒にいてもお互いあまりいいことないから、君は自分のやりたいことをやりなさい。」って。その言葉にははっとしましたね。

濱田:学生時代から付き合っていたフィアンセと別れて、会社も辞めてって、色んなことが重なってますね・・・。

並木:かなり疲れました(笑)。2年も一緒にいると相手がまるで自分の一部のようになっているから、それを血だらけになりながら引き剥がすような感じ。あの時の私は泣き暮らしで、体重も激減しました。まあすぐ戻りましたけど(笑)。

濱田:結婚することが幸せだと考える女性も多いと思うんですけど・・・。

並木:ね。だから私も板ばさみになりながら、仕事も家庭も守ろうと頑張っていたんだろうね。でも、私はまだ家庭を大事にするステージじゃないし、そのステージに行く前にまずは自分のやりたいことをガッツリやらなきゃいけないんだっていうのを薄々分かっていたんですよ。でも、いつかはお母さんになるのが夢だよ。

濱田:麻衣さんはどんな結婚観を持っていますか?

並木:結婚ね~。結婚というよりは、子どものことを考えるかな。私は今やりたいことができて、すごく幸せ。だから、同じように素直に幸せを探していける子どもを持つには、自分はどういう親でいたらいいのか、どういう家庭を築けばいいのかって考える。今のところの結論は、先ずは「子どもは意外と、自分で何でもできるんだ」って信じて取り掛かることかな、と思っています。周りが信じてあげることで、子ども自身も自分を信じる力を育てていけると思うから。

濱田:麻衣さん、すごくステキなママになりそう。でも、子ども中心なんですね。結婚のことは考えないんですか?

並木:結婚は分からないなぁ(笑)。でも、私にはまだやりたいことがいっぱいあるということを分かってくれる相手と一緒にいたいかな。できればその人にもやりたいことがあって、お互い切磋琢磨できる関係がいいと思う。「支えてくれる人がいいんじゃない?」って言われたこともあったんだけど、私だけ頑張って相手が支えてくれるっていうのも、私にとっては心の負担になると思うんだよね。「あなた何かやりたいことないの? 私のこと支えてそれで人生終わっていいの?」って。だから、それなりにやりたいことが決まっていて、自分で動いている人がいいと思う。経済的に大変だったとしても、やりたいことがある人はなんとかしちゃうからね。

「色々やっていたら、化学反応が起きていく」

濱田:それにしても麻衣さん、留学、就職、転職・・・って人生経験豊富ですね(笑)。でも、そういうひとつひとつの経験が、麻衣さんを作り上げているんでしょうね。

並木:人って、一人一人が色んなものから作られている。その人にしかない化学反応だよね。私、ずっと前から持っているイメージがあるんですよ。フラスコのイメージ。私たちって、人と出会ったり、本を読んだりすることで、色んな刺激や要素をもらうじゃない。それをフラスコにぽこぽこ入れていくのね。最初は人の意見や本に書いてあったことのコピーを突っ込んでいるだけで、「こんなコピーばっかり入れて、私って一体何者なんだろう?」って思うんだけど、気がついたら何かできてた、みたいになるんじゃないかなって。

濱田:それ、分かります!私も世界一周に出て、フラスコに色んな経験を貯めまくって、やっと自分の意見に自信が持てるようになりました。それまではやっぱり不安で、自分の意見を言っているつもりでも、どこかで聞いた話をそのまま言っちゃったりしていました。

並木:そうそう、やっと自分なりにできたな、って感じだよね。色々やっていたら化学反応が起きて、それなりに何かできたらしい、みたいなイメージ。でも自信ってなかなか持てないんだよね。本当は毎日ちょこちょこ入れているから、じわじわと何かが変わっているはずなんだけど、自分ではなかなか気付けないんだよね。

濱田:やっぱり経験を積まなきゃいけないんでしょうね、一定量。そこまでいって、初めて化学反応が起きて、自分の色になるんだと思います。

濱田:麻衣さんは今後、どのような方向に進んでいくんですか?

並木:それが分からないんだよね(笑)。でも、社会にあふれている問題に、どうやって人を巻き込んでいけるか、巻き込まれてもらえるか、ということを漠然と考えています。それは「自分が関わっているパレスチナ問題にも、もっと人それぞれの色々な関わり方があってもいい」と思うところから来ていると思っています。だから、解決したい社会問題を如何に面白く見せてみるか、如何に人を惹きつける形にしていくか、ということを考えているところ。

濱田:確かに、物事というのは色々な見せ方があると思います。真面目に見せることも出来るし、面白く見せることだって工夫次第で出来ますよね。どうせやるなら、私は面白い切り口から取り組んでいきたいです! 麻衣さんなら、きっと多くの人を巻き込んでいくような見せ方や仕掛けを作られるんじゃないかなと思いました。本日はありがとうございました!


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