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グレイひとみさん

濱田 真里
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特定非営利活動法人プロジェクトフレンズ代表。早稲田大学第一文学部卒業後、オーストラリア留学を経てアメリカにて修士、博士課程終了。
アメリカ人の夫と長女と一緒に日本に移住し、東京を拠点にカンボジアとの交流活動を始める。2010年にカンボジアに家族5人で移住し、日本とカンボジアの架け橋として国際協力活動に夫婦で専念している。

「本当にここにいてもいいのかな、と思う時もある」

濱田:グレイさんはカンボジアに暮らされて現在何年目なんですか?

グレイ:こちらの生活は1年経ったところ。今までは東京をベースに年に3回ほど夫がこちらに来ていたんですけど、団体が法人化するにあたってやっぱり現地でじっくりと環境を整えていきたいと思って。それで、子ども達を引き連れてこっちに来ました。

濱田:カンボジアにお子さんと来られるというのは珍しいですよね。

グレイ:そうですね。でも実は子どもを連れてくるどころか、日本で新しく家を買おうと思っていたくらい、カンボジアに来る予定もなかったんですよ。だけど、カンボジア駐在の必要を感じ、その時は私くらいしか行ける人がいなかったから子どもと一緒にこっちに来ちゃったんです。

濱田:人生どうなるかわからないですね。

グレイ:そうですね。どのくらいこちらにいるのかもまだはっきりしないんです。だから、時の流れに身を任せて…といきたいところなんですが、子どものこともあるので、今は後任になって下さる方を探しながら活動しています。

濱田:旦那さんとはどちらで出会われたんですか?

グレイ:夫とはアメリカで知り合って学生結婚したの。卒業して子どもを産んだ後もしばらくアメリカに暮らしていたんだけど、やっぱり祖国を知らないままというのは子どもがかわいそうかな、と思って一度日本に住むという選択をしたんです。今はアメリカでも日本でもないカンボジアに暮らしているけど、それも子どもたちにとって悪い経験ではないと思います。

濱田:カンボジアに暮らされて何か気付いたことはありますか?

グレイ:一番の気付きは、自分たちとカンボジアの人たちとの経済力の違いですね。子どもたちが病気になれば病院に連れて行けるし、何かが壊れたら新しい物を買うお金がある。今のお給料で東京に暮らすことはできないけど、それでも現地の人から見たら裕福なレベルなんですよね。だからある意味、本当にここにいてもいいのかなって思ったりします。だからと言って生活レベルをそこまで下げることは出来ないし。自分の経済的な感覚をどこに置くかというのは、2年目に入った今でも悩んでいますね。

「レールに敷かれた生き方だけじゃなくて、それぞれに個性があって、人生がある」

濱田:グレイさんはアメリカでの生活が長いんですよね?

グレイ:そうですね。もともとは日本で生まれて両親も日本人なんですけど、小学1年生の時に父の留学の関係でアメリカに来たんです。その後、帰国して中高大を日本で過ごしたんですが、大学院の時にまたアメリカに行きました。大学院を出るのに時間がかかったので、20代はずっとアメリカにいましたね。

濱田:大学院では何を学ばれていたんですか?

グレイ:キリスト教系の大学院で、カウンセリングの研究をしていました。日本人はどうやって心の痛みや、傷を取り扱っているのかということを学びつつ、聖書によるその痛みとの関わり方を探っていました。

濱田:なぜ聖書を取り上げられていたんですか?

グレイ:父が牧師で、私もクリスチャンなんです。必要ないと思って大学時代に離れたりもしたんですけど、やはり自分を見つめるためにも聖書が必要だなと感じました。自分よりも、人間よりも大きい存在を信じて生きていきたいと思って。だから大学院はキリスト教系を選びました。現在の私の活動は宗教と直接的な関係はありませんが、活動している私たちが個人的に信仰を持っているということは皆さん理解して下さっていますね。

濱田:グレイさんが現在されている活動を始めたきっかけは何だったんですか?

グレイ:日本の若者に海外へ目を向けてもらうことで、レールに敷かれた生き方だけではなく、色々な人生があるということを知ってもらいたくて活動を始めたんです。日本を出て、外から日本と自分を見つめ返す時間を持てたらいいんじゃないか、と思って今のようなカンボジアでのボランティア旅行をはじめました。

「みんなそれぞれで良いんだと受け入れられるようになってからは楽になりました」

濱田:グレイさんの活動の軸は何ですか?

グレイ:それは、日本の若い人たちに自分らしい人生を歩んで欲しいという想いですね。だから今はたまたまカンボジアの孤児院にいるけれど、どこにいても心の半分はいつも日本に向いているんですよ。日本の若い人たちに、自分にとって当たり前の世界の外に、もっと広い別の世界や出会いがあるということを知ってもらいたい。そして、自己実現、自己満足の人生だけではなく、「人のため」に生きること、自ら選択して人生を切り拓いていく勇気を、カンボジアでの経験から得て欲しいですね。

濱田:お子さんにはこう育って欲しいという想いはありますか?

グレイ:日本やアメリカの家族や友達との関係は意識的にしっかりと持たせて、インターナショナルな雰囲気の中でこれから育って欲しいという想いが強いかな。特に私の子どもたちは100%日本人の血というわけじゃないからね。日本人の両親だと、カンボジアでも日本食を食べさせて、日本人のアイデンティティを確立させたいと考える人も多いけど、うちはお父さんが日本人じゃないから、そういう思いもないですし。

濱田:お子さんの国籍はどちらなんですか?

グレイ:今は日本とアメリカの両方を持っているの。アメリカでは二重国籍を持てるんだけど、日本では持てないから今後どちらかを選ばなくてはいけなくて。選ぶということは子どもにとって酷だと思うから、今後日本の制度が変わればいいんだけどね。私は国籍は日本人、と変わらないものがある。だけど、子どもたちは今は両方あって、初めて両方を確認できる環境にいます。できるだけ早いうちに「どちらか」決めて成長する方がいい、と言われています。なので、近いうちに家族として決めたいとは思っています。

濱田:自分のアイデンティティをどこ置くかは重要ですよね。

グレイ:きっといつか、子ども達は自分のアイデンティティはどこに根付いているのだろうかって悩むと思う。両方の国にあることを頭でも理解して、落ち着いて受け入れられるようになるまで結構時間がかかるんじゃないかな。私も20代でアメリカに戻った時は、自分が日本人でありながらアメリカと日本のどちらに所属するのか分からなくて苦しみました。でも、そのうちこういう側面は日本人的なんだけど、こういう側面は日本人的じゃないとか、具体的に整理が出来るようになってきて、国籍を超えて自分は自分のままでいいんだって思えるようになるんですよね。私の場合、一番楽なのは色んな国籍の人が集まっている場所です。みんなそれぞれで良いんだと受け入れられるようになってからは楽になりました。子ども達にもそういう環境でぜひ、伸び伸びと育って欲しいですね。


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